ケーススタディ

 マイクロフォーカスX線装置による透視およびCT装置の現状と動向
  ◇◇1回目◇◇

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1.はじめに

今までの一般の撮影原理では試験体はフイルムに近づけることが原則でした。しかしマイクロフォーカスX線装置による検査では試験体を焦点に近づけることが原則です。焦点の大きさが小さいために拡大しても画像のボケはきわめて小さいため、微小部分が大きく鮮明に映し出されます。このため分解能が向上し、多く使われるようになりました。マイクロフォーカスX線装置ではX線の発生量が少なくフイルムと組み合わせて使用されることはほとんど有りません。より感度の高いイメージインテインシファイアと組み合わせ、リアルタイムで観察できる透視装置として使用される場合がほとんどです。またマイクロフォーカスX線装置を線源とするCT装置が使われる様になりCT装置の分解能が飛躍的に向上しました。

2.マイクロフォーカスX線による透視

2.1X線透視の原理

 X線は光と同じ電磁波ですが、波長が光より短く材料を透過する性質があります。材料を透過する際に全てX線が透過するわけではなく、一部透過し一部吸収されます。この吸収の程度は、材料の1)厚さ、2)密度に依存します。すなわち厚さが厚い、密度が高いと吸収が多くなり、透過量が少なくなります。材料の中に空洞がある場合には透過厚さが薄くなり、透過量が多くなります。透過X線量の検出に使われる、蛍光体はX線が多く当たるとより光る性質があります。実際はイメージインテンシファイアーと呼ばれる蛍光体が表面に塗られた撮像管によりX線の強弱が電子を介して光の強弱になり2次蛍光面に写し出されます。この像をテレビカメラによりモニターに写します。
X線透視の原理

2.2マイクロフォーカスX線装置の特徴

1)マイクロフォーカスX線装置の構造

X線装置には管電圧、管電流と呼ばれるパラメータがあります。X線は高速度の電子がターゲットに当たり急激な減速を受けた時に発生します。この時、電子を加速させる電圧を管電圧と呼び、電子の流れを管電流と呼びます。管電流はX線量に比例します。管電圧を増すとX線の波長が短くなり透過能力が高くなります。厚いサンプルあるいは比重の高い材料で構成されたサンプルには高い管電圧、高い管電流を使用する必要があります。マイクロフォーカスX線装置が構造上の一般のX線装置と異なる点は、電子ビームを絞る機能が付いていることです。絞る方法は磁界による方法と電界による方法の2つが有ります。
マイクロフォーカスX線装置の特徴

2)開放管と密封管

 電子を高速度で加速させるためには10−5程度の真空が必要になります。使用するときに真空に引くX線管を開放管、予め真空にして製造し真空装置が付属していない装置を密封管と呼びます。開放管はフィラメント等の部品を交換することができるので長寿命でランニングコストを安く押さえることができます。また160KV、225KVの高い管電圧の装置が作られています。欠点としては始動時に真空引きの時間がかかることです(15分程度)。密封管は90KV、130KVのような低管電圧の装置が多いことと真空装置が無いためイニシャルコストが安いことが特徴です。

3)拡大率

X線の発生する部分を焦点と呼びますが、一般の装置では焦点が大きく、サンプルが焦点に近づくと画像がボケます。これは欠陥の輪郭がイメージインテンシファイアー上の広い範囲に投影されているためです。マイクロフォーカスX線を使用すればサンプルを焦点に近づけてもボケることがありません。さらにサンプルの小さな部分が大きく拡大され微小部分が顕微鏡のように観察できるので欠陥の検出性が向上します。通常のX線装置の焦点寸法は約2mm、ミニフォーカスと呼ばれるX線装置の焦点寸法は0.5mm〜0.1mm、マイクロフォーカスX線装置の焦点寸法は50ミクロン〜2ミクロンで拡大率を大きくしてもボケの量は認識出来ません。特に2ミクロンの焦点では拡大率を数百倍以上にすることができます。
拡大率

4)反射型ターゲットと透過型ターゲット

 X線が電子ビームに対し反射するように発生するターゲットを反射型ターゲット。X線が電子ビームに対し平行にターゲットを透過して発生するターゲットを透過型ターゲットと呼んでいます。反射型ターゲットと比べて透過型ターゲットは焦点と窓間距離が小さいという特徴があります。すなわち拡大率を大きくとることができます。
反射型と透過型

5)焦点の大きさと管電流

 電子がターゲットに当たる時に電子の持っていたエネルギーのほとんどが熱に変換されターゲットの焦点部は非常に高温になります。マイクロフォーカスでは10ミクロンの領域に10ワット(100KV,0.1mA)以上の電子を当てるとターゲットが溶けてしまいます。したがってマイクロフォーカスでは管電流がわずかしか流せません。 現在最も小さい焦点の大きさは1ミクロンあるいは2ミクロンと言われておりますが、2ミクロンの焦点であっても、電子ビームの直径は0.9ミクロンでありタングステンターゲット中で電子が拡散して2ミクロンになってしまいます。1ミクロンと称している装置は焦点の大きさではなく電子ビームの直径呼んでいると考えられます。
また透過型ターゲットではX線がタングステンターゲットを通して出てくるため線質が硬いという特徴があります。反射型では長波長X線が多く発生します。従ってマイクロフォーカスは半導体分野で多く使われていますが、その中でも100ミクロン以下のBGA、CSP,バンプの検査には透過型、パッケージの検査には反射型が適していると言えます。

ターゲット形式 真空形式 管電圧 管電流 焦点寸法 焦点、窓間距離
反射型 密封管 90KV 4W 5μm 8.5mm
    130KV 4W 8μm 14mm
  開放管 225KV 10W 5μm 6mm
  開放管 160KV 2W 2μm 0.5mm

2.3マイクロフォーカスX線装置の過去と現在

 最初のマイクロフォカスX線装置は1980年ごろ開発され、焦点寸法は50ミクロンの密封管式装置でした。この画像はPBOビジコンから得られる画像と同等であったので、注目を集めるには至りませんでした。
50ミクロン焦点からの透視画像
50ミクロン焦点からの透視画像


1980年代の終わり頃になると開放管と密封管で10ミクロンのマイクロフォーカスX線装置が開発され、次第に注目されるようになってきました。ビジコン式透視装置より良い画像が得られるようになりました。しかし実際の焦点寸法は20ミクロン程度と推測されます。
10ミクロン焦点からの透視画像
10ミクロン焦点からの透視画像



1990年代初めには5ミクロンのマイクロフォーカスX線源の出現により、高拡大撮影が可能となり応用分野が非常に広がりました。現在は2ミクロンあるいは公称1ミクロン以下の焦点寸法の装置も有りこれ以上小さくすることは、焦点の大きさが小さくなるにつれて、管電流も小さくなり、実用上このあたりが限界と考えられています。

5ミクロン焦点からの透視画像
5ミクロン焦点からの透視画像
2ミクロン焦点からの透視画像
2ミクロン焦点からの透視画像

 

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