ケーススタディ

 マイクロフォーカスX線装置による透視およびCT装置の現状と動向
  ◇◇2回目◇◇

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3.X線CT装置

3.1X線CT装置の概要

X線CTはX線を多くの方向から照射しそれらの透過X線の分布からコンピュータが材料内部の断面形状を計算します(再構成と呼んでいます)。断面の方向は透視画像に直交しX線ビームに対し平行です。更に透視画像は材料内部の状態が重なっていますが、X線CTでは材料内部の状態が重ならずにある断面のみを表示します。下右図に計算の概念図を示します。マイクロフォーカスCTではサンプルを回転するだけの第3世代CTと呼ばれる方法が採用されています。検出器としてI.I.が使われ、テレビカメラからの映像信号のうち通常は中央付近の何本かの走査線のみをAD変換してデータとして使います。サンプルを回転させながらこれを繰り返し、取込んだ位置の断面画像を再構成します。ボリュームCTと呼ばれる方法では全ての走査線からのデータを取込み連続断面画像を再構成します。また連続横断面画像から縦断面画像、立体画像を作ることも可能です。マイクロフォーカスCTではサンプルを線源に近づけ拡大してスキャンし、高い分解能のCT画像を得ています。

3.2 CTの原理

 X線は材料中を透過する際に、物質と相互作用を起こし吸収を受けます。その入射強度 Io と材料を透過後の強度 I との関係は次式で表わされます。
  I = Io exp (−μL)
Xは材料中の透過長さ。μは線吸収係数と呼ばれる係数で、吸収の程度を表わしています。

CTの原理
X線のエネルギー(E=h.C/入)と線吸収係数の関係を下図に示します。

線吸収係数
X線CTでは、X線透過線量分布を検出器にて検出し、各方向のデータからこの吸収係数の分布を断面形状と見なしてコンピュータにより計算させます。 この計算方法は種々考案されましたが、現在はフィルタードバックプロジェクション法が広く使われています。

その原理をマトリックス上で考えてみます。このマトリックスには穴が空いており、X線の透過量が他に比べて10倍多いとします。 まず透過X線量を各画素に割り振り、その後X方向とY方向を加えると上右図に示す様になり、欠陥部の値が大きくなります。照射の方向を増やしてゆくと、穴の空いた部分がさらに他と区別しやすくなります。しかし、穴の周囲が星形になったり、あるいは中心付近はサンプリングの密度が高くなってしまいます。これを防ぐためにあらかじめフィルター関数を掛けておくと、穴の部分だけがはっきりと検出されます。また、フィルター関数を選ぶことにより、シャープな画像あるいはノイズの少ない画像も作ることができます。
以上の考察を数式で置き換えてみます。吸収に関する式 を変形すると
 μ x L = −Log (I/Io)
材料均一でない場合上式の左辺は
 μ x L = μ1  x L1 + μ2  x L2 + μnLn = ∫μ(L)dL
従って、
  P = −Log(I/Io) = ∫μ(L)dL
となります。 Pの分布は、投影(プロジェクション)と呼ばれています。
次にプロジェクションデータ(P)とフィルター関数(h)を畳み込み積分(コンボリューション積分)を行ないます。
 q(r,θ)=∫∞−∞  h(r−t) {1/2・p(t,θ)} dt
この関数qにバックプロジェクション演算を行なうことにより、断面の画像、すなわち吸収係数の分布を得ることができます。
 μ(xy)= 1/2π∫π−π q(xcosθ+ysinθ,θ)dθ

3.3 X線CTの方式

XX線CTは、その開発の過程に応じて、第1世代から第4世代に区分しています。その諸元を次表に示します。世代が進むにつれて高速にスキャンできるようになりました。

世代
X線走査方式
X線ビームの形状
検出器の数
X線管
X線検出器
被検体
第1世代
固定
固定
回転・
横行
単一ビーム
(ペンシルビーム)
1個
第2世代
固定
固定
回転・
横行
扇状のファンビーム
(3°〜15°)
6〜60個
第3世代
固定
固定
回転
扇状ビーム
(30°〜40°)
撮影領域を
覆う数
第4世代
固定
固定・
回転
回転
扇状ビーム
(30°〜50°)
600〜
  2000個

X線CTの方式

2)3.4 マイクロフォーカスCTの特徴

 マイクロフォーカスCTの方式は、第3世代方式あるいはオフセット第3世代方式を採用しています。 この方式の利点は:
 1) 被測定物を回転させるだけで測定できる。
 2) 測定時間が早い。
 3) オフセット第3世代CTでは1.8倍程度大きく拡大して
     スキャンできるので分解能が高い。
マイクロフォーカスCT
マイクロフォーカスCTの最大の特徴は、対象部分が検出器の視野いっぱいになるように拡大率を変えられることです。CTのソフトウェアでは回転中心が視野のどこにあるかインプットしなければなりません。焦点の位置が10μmずれても、100倍の拡大率では検出器上では1mmずれてしまいます。また、マイクロフォーカスX線装置は管電圧により焦点の位置が変化します。機械的精度を上げて、回転中心の位置を保つことはマイクロフォーカスCTでは不可能です。
マイクロフォーカスCTでは回転中心の位置を検出するキャリブレーションを簡単に行なうことができ、正確な断面画像を得ることができます。

3.5マイクロフォーカスCTの検出器

マイクロフォーカスCTの検出器は、I.I.(イメージインテンシファイア)を使っています。 工業用デジタルカメラを介したテレビ用映像信号を利用して、データを取り込んでいます。その原理図を下図に示します。

拡大率
I.I.全面に写っている2次元画像情報は走査線上の信号として送られ、信号の高さが透過X線の強度情報になります。
デジタルカメラでは、信号の高さ情報を12bit、すなわち4096階調に分割してA/D変換しています。通常の8bit画像処理装置に比べ、16倍細かく階調を分割し、広いダイナミックレンジを確保することができます。しかし、12bitでも不足する場合は、金属フィルター等を使って対象物の被写体コントラストを下げてCTスキャンする等、工夫が必要となります。一本の走査線は1024ピクセルでA/D変換されています。

 4インチI.I.を使用した場合、100mm÷1024=0.1mmとなり、1個の検出器の開口幅は100μmと考えられます。固体検出器と比べて分解能の高いCT画像が得られます。スライス幅は走査線を何本か束ねるかで決定されます。カメラの縦方向のピクセル数は1024であり、4インチI.I.を使用する場合に、1本の走査線はI.I.上で約100μmとなります。 スキャンする拡大率が10倍の場合は、スライス厚さは10μmとなります。走査線を5本束ねると、スライス厚さは50μmにすることができます。スライス厚さは検出すべき対象の厚さと同じ程度に薄くすると検出能力は向上します。

3.6 データ収集時間と再構成時間

 欠陥検出能力を上げるためには、分解能ばかりでなくノイズを下げる工夫もしなければなりません。ノイズを下げる方法として、1/12秒毎に送られて来る画面(フレーム)を積分し、かつ回転中にデータを取り入れる数(ビュー数)を増やすことができます。最大ビュー数は3600回で、その時の積分枚数は8枚です。
例えば、概略の断面形状を見る場合には、積分枚数1、ビュー数800を選ぶと、1/12 x 800=67秒でデータを収集します。最大の分解能を得るために、積分枚数8、ビュー数2400を選ぶと、1/12 x 2400 x 8=26分でデータを収集します。

マイクロフォーカスCTの断面画像再構成の時間は1024 x 1024のマトリックスで再構成を行なうと、100ビュー当たり1秒で終了します。 2400ビュー、 1024 x 1024マトリックスで再構成を行なうと、24秒で終了します。512X512マトリックスの場合は1/4の時間で終了します。

3.7 マイクロフォーカスCTによる応用例

 225kVマイクロフォーカスX線装置および I.I.組合わせてスキャンを行なった応用例を紹介します。

リチウム電池の断面画像(視野直径は約20mm)
リチウム電池の断面画像(視野直径は約20mm)

アルミニウム鋳物の断面画像(視野直径は約30mm)
アルミニウム鋳物の断面画像(視野直径は約30mm)

ICのハンダボールの断面画像(ハンダボールの直径は500μm)
ICのハンダボールの断面画像(ハンダボールの直径は500μm)

薬(錠剤)(視野直径3mm)
薬(錠剤)(視野直径3mm)

3.7 マイクロフォーカスCTによる3次元表示

ACTIS+2では、断面画像データを重ねて立体データを作り、タテ断面表示を行なうMPRソフトおよび陰影のついた立体画像を作る3Dソフト等が準備されています。

MPR画像例
MPR画像例
3D画像例
2ミクロン焦点からの透視画像

3次元表示ではCT像を連続的に100枚〜200枚程度作る必要があるので、高速にスキャンするために3スライス同時収集、ボリュームCTが準備されています。立体データから表面の位置情報を出力して内面が計測できる3次元測定器として使用することも出来ます

3.9 CDD曲線

CT装置の性能はCDD曲線により表現することができます。横軸に欠陥寸法、縦軸にコントラスト比を取り検出限界及び分解能の限界となる曲線が2本引かれています。この曲線より上側が検出可能領域です。一般的に2ピクセルあれば空洞の検出が可能といわれています。下の図は試験体直径10mmですから1000X1000のマトリックスでCT画像を作れば、1ピクセル10ミクロンですから20ミクロンの空洞は検出可能です。



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