ACFM きず検出測定器

交流電磁場測定法(ACFM)による石油タンク溶接部の探傷例
Defect detection of weld of Oil storage tank by ACFM

テスコ株式会社 鈴木尚美、神保純一  

1.はじめに

材料や構造物に存在する欠陥の評価は非破壊検査により行われている。破壊力学に基ずく材料や構造物の健全性評価には、少なくとも欠陥の長さと深さが必要とされている。しかしながら非破壊検査の各手法では欠陥の長さを測定する事は確率されていても、欠陥の深さを正確に測定する事は原理的に不可能な手法や、方法があっても難しさが存在しているのが現状である。材料の表面開口欠陥の深さを測定するには、従来ACPD(交流電位差法)が用いられてきた(1)。電極を直接、材料にあてる接触式であることを改善して、非接触で電磁誘導により一様な電流を材料の表面近傍に流すことで、強磁性体の表面開口欠陥の深さおよび長さを簡単な操作で測定できるACFM(交流電磁場測定法)が開発された(2)−(4)。
 ACPD法は材料内に交流電流を流し、健全部と欠陥上の電位分布の比較により欠陥の深さを知る事ができる。これは欠陥に直交して一様にに分布した電流が流れることが条件である。ACFM法ではこれを小型のプローブからの誘導で、ある一定の範囲に一様な電流が流れるようにした。検出については、UCL(University College London)のDoverらによるACPD法における欠陥の周囲の電界のふるまいの解析に基ずき、深さ及び長さの情報を誘導により磁界変化として検出する小型のコイルをUCLと共同でTSC(Technical Software Consultants)が開発した。従って小型のプローブのみで完全に非接触で電流の発生と欠陥の検出の両方が行えるようになった。
 非破壊検査において非接触で電磁誘導を用いる手法に渦流探傷試験があげられるが、最も異なる点は渦流では局部的な同心円状のうず電流を用いる事にある。つまり欠陥に一様な電流があたらないため、欠陥の深さを理論的に解析しにくい点にある。またリフトオフや透磁率などの材料特性の影響を強く受ける不利がある。一方ACFM法では同様な電磁誘導は用いていても、電流の分布形態が全く異なるからその特性は大きく違ってくる。第一に、材料中の電流の減衰は相対的に小さい。従ってリフトオフによる変動は小さい。これは材料表面とプローブの間の距離をとれる事を意味し、塗料や錆などの上から探傷できる。前処理が簡素化される。第二に、溶接ビードに直交してプローブを置くと、電流は止端部に直交する方向に向かうためその方向での透磁率変化の影響を受けにくく、鋼溶接部のトウクラックが検出できることになる、従来渦流で苦手としていた強磁性体のクラックの探傷が可能となった。このように強磁性体溶接部の表面開口欠陥の深さ及び長さを非接触で測定できることは、磁粉探傷試験、渦流探傷試験及びACPD法のような既存の手法にまさる十分な利点を持つといえよう。

2.ACFM法の原理

 入力電流に対して直交する半楕円欠陥の磁場成分を図1のようにとると、Y方向の成分Byは入力電流に平行で、X方向の成分Bxは電流に垂直で金属の表面に平行である。Z方向の成分Bzは金属表面に垂直である。一般的にいって理想的モデリングは、磁界成分が表面電位差の変動の度合と関係していることを示している。Y方向に欠陥がなく均一な電流が流れていると磁界は電流に垂直なXでは均一であるが、他の2つの成分ByとBzはゼロである。欠陥があると電流は欠陥部の最も深い所をそれて、クラックの端部近くに集中する。この効果によってByとBzに大きな山と谷が生じるが、Bxは欠陥部全体に広いくぼみを示す。クラックの上をプロ−プにて走査した時のBxとBz信号の例を図2に示す。またこれらの信号の定性的説明を図3に示す。Bzはクラックの深さを推算するのに用いられ、Byの山と谷はクラックの長さを測定するのに用いられる。Bxを縦軸に、Bzを横軸にとったのがバタフライプロットと呼ばれるもので、時間軸がないので移動速度に影響されない、下方向に半円を示すとクラックの可能性が高い。

3.測定と探傷結果

 溶接部の止端部にプローブを置いて、溶接線に沿ってプローブを走査する。トウクラックが検出されると、パソコンの表示にBzとBxおよびバタフライプロットが表示される。Bzの山と谷を示すプローブの移動距離が欠陥の長さとなる。Bxのトレースより背景値と最小値をパソコンに入力すると、深さを演算する。  軟鋼溶接部の余盛中心に放電加工による半楕円欠陥を加工し、GFコーテイング(約1mm)を施した試験片の余盛中心上をペンシルプローブにて手動で走査した結果を図4に示す。溶接線方向の2x1mm(長さX深さ)欠陥まで検出した。深さを演算した結果は加工値に近いものとなった。

4.まとめ

ACFM法は、非接触でコーテイング上から鋼溶接部のトウクラックを探傷する新しい探傷方法であり、表面開口の欠陥の長さ及び深さを知ることができる利点は大きいといえよう。

 


= 参考文献 =
(1) 庄司、金、 “電位差法による欠陥評価の現状と今後の展望”、配管技術、’96,1,p51-60
(2) R.Collins, “The Development of the ACPD and ACFM Techniques at UCL,Nondestructive Testing Materials, IOS Press (1995) , p65-74
(3) W.D.Dover, J.R.Rudlin, “Reliability of Crack Detection and Sizing for ACPD and ACFM” , Nondestructive Testing Materials, IOS Press (1995), p87-102
(4) D.A.Topp, “The ACFM technique and its application to the inspection of and its gas installations”, Insight, vol36, No6, June, 1994, p422-425.

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